ることが開発のポイントとみなされることが多い。しかし、こういう地域の発展においては「リカードの罠」が発生する危険性が大きい。そこで、希少資源化している土地の生産性をひきあげる技術革新と農業開発が必要不可欠となってくる。
農業開発も、経済開発の一環である限り、基本的には農業就業者1人当りの農業生産量を増大させるものでなければならない。ここで就業者1人当り平均労働生産性とは、就業者1人当り農地面積と土地生産性との積としてあらわされるものである。人口稠密な社会においては、いうまでもなく、土地面積の拡大が不可能である以上、労働生産性を上昇させる途は、土地生産性をひきあげることにしか求められない。アジア諸国の多くで1970年代以降、「緑の革命」とよばれた農業発展の大きな波がみられたが、これは基本的に米・小麦など食料穀物の生産において面積当り収量をひきあげうる新しい栽培品種が導入され普及していった動きであった。高収量をあげうる新品種は、国際農業試験研究機関が開発したものであった。これら開発された米・小麦の新品種を、農民が実際に栽培するか否かは、これらの栽培にとって不可欠な農業用水の供給体制がうまく整備されているかどうかという条件と、肥料が安価で必要な量が入手できるかどうかという条件にかかっていた。こういう条件がそれなりに整備された国・地域で、「緑の革命」が実現したのである。
ところで、ジャワ農村は「緑の革命」の点でひとつの成功例となっているが、この農業開発に閉ざされた農村という特性が強い影響を与えていた。インドネシアでのジャワを中心とする1960年代後半以降の農業開発の中核であったビマス計画という米増産型農業開発は、国家が強く主導する農業開発であった。肥料に関して、多大の補助金が投入されただけでなく、灌漑施設の修復・開発でも政府の役割が決定的に大きかった。灌漑に関しては、基本的にオランダ時代に作られた施設の修理・拡充が中心事業であったが、主たる幹線の灌漑施設は公共事業者が管理し、末端水路等は村自体が管理するという二元的管理システムになっている。高収量品種の栽培方法に関する農業普及も、中央政府・地方政府の農業普及局の役人である農業普及員によって担われており、これら農業普及員と接触するのは、農民組織の代表であり、この代表が農業普及員との接触後村の他の農民に農業知識を教える体制となっている。
そして、高収量品種を核とする新技術が、肥料に対する補助金支出にも助けられて
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